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心に響くもの

坂崎紫瀾の龍馬伝 – 汗血千里の駒

   

今年のNHK大河ドラマ、「龍馬伝」が終わってしまった。
今まで、坂本龍馬というと、どうしても司馬遼太郎のイメージがあった。
そして、大河ドラマというと、少し古い演出で若者には受け入れづらいものが多かったように思う。
だけれど、今回の龍馬伝は、これまでの凝り固まったイメージを、ことごとく壊していくような、素晴らしい作品だった。ほんとうに面白かった。
まるで舞台を見ているような役者の演技や、うそ臭さを感じさせない美術と映像の美しさ。意図的にイメージを外した配役もセンスが良かった。とにかく、製作陣の心意気というものが伝わってきた。

龍馬

そして、今回、司馬遼太郎に真っ向勝負を挑むにあたり、一体なにを拠りどころに坂本龍馬を作っていったのか。
それは、坂崎紫瀾の「汗血千里の駒」だった。この作品がクレジットされているわけでもないし、龍馬伝に原作・原案は明記されていない。
しかし、第一話冒頭で、いきなり、新聞記者である坂崎紫瀾が登場する。そして、岩崎弥太郎から、龍馬の話を取材する形で物語は進行していくことになる。

龍馬

この「汗血千里の駒」というのは、初めて龍馬を題材にした伝記小説のこと。
ドラマと同じように明治16年に高知県の土陽新聞で、実際に連載されていた小説である。つまり、龍馬が死んでから、たった16年の間に小説化されていたということ。
作中に、「これは著者が中浜万次郎(ジョン万次郎)から直接聞いた話である。」などの記述があることから、ほかにも龍馬の知り合いから、直接取材をしていたことは想像がつく。もしかしたら、龍馬伝のように、岩崎弥太郎からほんとうに話を聞いていたのかもしれない。
今では、幕末や明治の人間は歴史上の人物として、ある種のキャラクタのように認識されている面もあると思うけれど、「汗血千里」が連載されていた当時は、龍馬の身の回りにいた人たち(お龍、千葉佐那、乙女、勝海舟、後藤象二郎など)はまだ生きていた。
そのため、作中では、一般人の扱いとなる、お龍や、千葉佐那などは、仮名が使われている。こういったところが、妙な生々しさがあって面白いし、また当時を身近に感じさせてくれる。

龍馬を描いた小説やテレビドラマ、映画、劇は数えきれないほどある。こうした作品を通じて、龍馬はまさに国民的人気者となっているが「汗血千里の駒」はそれらの作品の源流といえるだろう。実際、「汗血千里の駒」が現在の龍馬像の原型を作っていることは、本書を一読すればわかる。強くて、自由で、大胆で、機知に富み、勝気な女性たちに守られていて、今日まで人びとを惹きつけてやまない龍馬の魅力は、ほとんどここに出揃っている。この「汗血千里の駒」が、魅力的な龍馬を、実に生き生きと描いたからこそ、龍馬を主人公とした物語がその後つぎつぎと生まれたのだと言っても過言ではない。司馬遼太郎の「竜馬がゆく」もそうしたなかのひとつだ。

(中略)

著者・坂崎には、後世のほかの作家にはない絶対的な強みがあった。それは龍馬と同じ土佐人で、しかも同時代を生きたということだ。
土佐藩医を父に持つ坂崎が生まれたのは、江戸鍛冶橋の土佐藩邸、黒船来航の嘉永六年(一八五三)のことである。龍馬はちょうどそのころ、江戸で剣術修行中だった。藩邸に顔をだしたときに、赤ん坊の坂崎の泣き声くらい耳にしたかもしれない。また坂崎は、幼いころ家族とともに高知に移っており、龍馬が西へ東へ奔走していたころ、高知で成長し、学問に励んでいた。龍馬の甥で坂本本家を継いだ坂本直寛(南海男)とは同い年で、友人でもあった。そんな高知には、「ああ、あの龍馬さん? 鏡川でいっつも泳ぎよったねえ」と龍馬を「近所のお兄さん」として知っている人がごろごろいたに違いない。坂崎にとって龍馬はそれほど遠い人ではなかったのだ。
龍馬以外にも、幕末から明治にかけて活躍し、小説などに描かれる人物は多い。だが、そのなかで龍馬がどこか別格の存在感を備えているのは、同時代人である坂崎が龍馬の生きた時代の中で龍馬をとらえ、書きのこしてくれたからであろう。資料的にも豊かとは言い難い当時、よくここまで書きこめたものだと驚かされる。

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