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心に響くもの

『クラウド アトラス』を観て思うこと – 選択することで世界は繋がる

   

クラウドアトラス現在公開中の映画、『クラウド アトラス』を観てきました。久しぶりに、ブログに書きたくなるような、凄い映画だった。なにが凄いって、「とにかく、凄い映画だった」というのが第一印象に出てしまうような、説明の難しい映画なのだけれど、簡単にいうと、輪廻転生や、縁・業・因、それから愛を描いた作品と言えばいいのかな。

クラウドアトラス

6つの時代の、6人の主人公による、6つの物語が、同時進行していくという、とても混乱を招きそうな構成で。実際、最初のうちは、混乱しそうにもなるのだけれど、話が進むうちに、違和感もなくなり、心地の良いテンポでストーリが進行していくようになる。
とは言っても、少しクセのある物語でもあるので、この世界に自分の人生観が合わないと、観ていて苦痛になるかもしれない。アメリカでは、鳴かず飛ばずの興行でコケてしまったらしい。アカデミー賞にもノミネートされなかったしね。

クラウドアトラス

それぞれのストーリは、アクションだったり、SF、コメディ、社会派ドラマ、サスペンス、ファンタジー、と異なるジャンルが混ぜられて、ひとつの映画となっている。それが、エンターテインメントとして成立しているのが、また凄い。
登場人物の設定から、時代背景まで違っていて、まったく関係のない話が展開されているようなのだけれど、それぞれの時代のエピソードと、相互関係を示す要素がたくさん盛り込まれている。
物語が、同時進行するわけだから、話が進んでは切り替わり、あっちへ、こっちへ、といろいろな時代に飛ぶのだけれど、その繋ぎ目の演出が秀逸で、もう感服しきり。脚本と編集に、苦労しただろうなぁ。

クラウドアトラス

この物語の登場人物たちは、みんな輪廻転生を繰り返す。
トム・ハンクスの演じる人間は、最初は悪人から始まり、途中、魂で繋がれた最愛の人にめぐり合いながらも結ばれず、善人、悪人と繰り返した末に、善と悪の心に葛藤しながら乗り越えて、最後は地球を救うまでに魂が成長していく。そして、最愛の人とも結ばれる。
同様に、ぺ・ドゥナとジム・スタージェスの二人も、最初の物語と近未来の世界の、どちらでも出逢い、愛し合う。人種、性別、立場を越境して、運命は死んでも続いていく。そこに差別はなく、肉体は魂の器として描かれている。
反対に、ヒュー・グラントの演じる魂は、時代が進むにつれて、どんどん業を深めて、最後には人食い族にまでなってしまうのだけれどね。
輪廻転生をしても、精進する人もいれば、何度も過ちを犯す人もいる。
これは、1回の人生においてもいえること。

クラウドアトラス

宣伝では、この輪廻転生がクローズアップされていたこともあって、そういった視点で観ていたのだけれど、監督であるウォシャウスキー姉弟は、輪廻転生を表現したいわけではないように思えた。
前世・来世というよりも、自分がこの世界でどう生きるか、ということを描いた作品だと思う。

クラウドアトラス

近未来世界のネオ・ソウルでは、奴隷として使われていたクローン人間の“ソンミ451”が、ひとりの人間と出会うことによって、自我を覚醒させて革命を起こそうとする。
そのペ・ドゥナが演じる、ソンミ451がこう言っていた。
「人生は、ちょっとしたことで、昨日と変わりうる。誰と出会ったかで、自分は変わる」
この台詞では、仏教でいう“機根”が浮かんでしまった。仏教の概念てんこ盛り。
自分では、気付かない本来の自分を、人との出会いによって気が付いていく。人と人の出会いが縁である。縁のつながりが人生となる。
本当の自分を気づかせてくれる人との出会いによって、少しずつ本当の自分に近づいていくとされる。

クラウドアトラス

特に、ソンミは、多くの言葉を残すことから、6つの物語の中でも強烈な存在感を発揮していた。
「命は自分のものではない。子宮から墓場まで」
「人は他者とつながる。過去も、現在も」
「すべての罪が あらゆる善意が 未来をつくる」
この言葉からも、明らかだけど、人間の可能性を信じるような映画だ。

クラウドアトラス

1849年、南太平洋上の奴隷船の話から、文明崩壊後の2321年までの、約500年間の間に、ひとりの行なった行動がつながりあって、影響していくことになる。
人が生きるということは、すべて因果関係の上に成り立っているわけだから、それぞれの行動が、目に見えて大きなものではなかったとしても、自分の知らない500年後に、重要な影響を与えているかもしれない。そう考えると、今まで出会ったすべての人や、これまで生きてきた人によって、自分が作られていることが分かる。

クラウドアトラス

この映画の中で、主人公たちはいろいろな選択をしていく。自由を奪われるような逆境の立場であっても、選択することは自由である。そして、“選択”することで、世界は繋がっていく。
エンディングの「一滴から大海はつくられる」という言葉は、とても印象的だった。
その選択が正しいものであれば、どの時代でも、小さな勇気や正義感、やさしさから世界を変えうる一歩が始まるということなんだろう。
決して、ハッピーエンドとはいえない終わり方ではあったけれど、温かみにのある、とても勇気がもらえる映画だった。

クラウドアトラス

3時間弱と長尺な映画ではあるけれど、『クラウド アトラス』に関して言えば、まだまだ短い。
特に、近未来のネオ・ソウルと、文明崩壊後の地球では、描くことがたくさんあると思う。
ディレクターズカット版で、4時間ぐらいにならないかな……。

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